怪獣図書館【ノンフィクション収蔵庫】

 未確認動物本の王道といえば、やはり「探検記」であろう(あれ? ボクだけ?)。
謎の怪物が現われるという土地に、勇敢にも足を踏み入れ、様々な困難を克服して、前進する探検隊。
読者も手に汗握りつつ、実際に自分も隊員になったようなつもりでページを繰っていく。
ボクも子どもの頃、ひとり図書室に籠っては、そのような本をあさり、血わき肉躍らせたものである。
ここでは、比較的真面目に書かれたドキュメンタリー本や、名(迷)作と思われる探検記(日本語&邦訳)を中心に集めてみた。
かつては大手新聞社やテレビ局などの主導、もしくは資金援助によって成り立っていた怪獣探検も、最近は交通手段の発達とインターネット普及によって、「志のある個人」によるユニークな探検&取材と、その報告としての充実したレポートが増えてきた感がある。また、1970~80年代のオカルトブームの洗礼を浴びた人々が、このジャンルの書き手の主流として台頭してきたが、切り口もそれぞれにオリジナリティがあり、今後とも楽しみである。(*一部、旧サイトのコラムからの引用もあるので、文体がまちまちになっております。ご容赦ください)

実録・探検ドキュメント・個別研究(文化としての怪獣含む)

・ASIOS『UMA事件クロニクル』(彩図社、2018年8月8日)

世界を騒がせた有名なUMA事件を、年代ごとにじっくり考察。多彩な執筆陣が、生物学、心理学、民俗学、文学等々、様々なアプローチで、その真相に迫る。あまり日本の媒体では紹介されてこなかった貴重な情報も盛りだくさん。
巻末には「UMA人物事典」「UMA事件年表」を収録。今後のUMA研究には必携の書。

ボクは「野人(イエレン)」と「天池水怪(チャイニーズ・ネッシー)」を執筆。
内容は以下の通り。

―目次―
「はじめに」―魅力溢れる未確認動物の世界(本城)
【第一章】1930年代以前のUMA事件
河童(小山田)/人魚(藤野)/クラーケン(横山)/モンゴリアン・デスワーム(本城)/ジャージー・デビル(皆神)/モノス(本城)/コンガマトー(小山田)/ネッシー(本城)/キャディ(本城)
【コラム】マン島のしゃべるマングース(小山田)/【コラム】博物館が買ったねつ造UMA コッホのシーサーペント(ナカイ)

【第二章】1940~60年代のUMA事件
ローペン(本城)/イエティ(皆神)/エイリアン・ビッグ・キャット(ナカイ)/ハーキンマー(スクリューのガー助)(山本)/シーサーペント(皆神)/モスマン(秋月)/ミネソタ・アイスマン(加門)/ビッグフット(パターソン・ギムリン・フィルム)(加門)
【コラム】怪獣が本当にいた時代(原田)

【第三章】1970年代のUMA事件
ヒバゴン(横山)/ツチノコ(小山田)/カバゴン(蒲田)/クッシー(原田)/野人(イエレン)(中根)/チャンプ(小山田)/ドーバーデーモン(皆神)/ニューネッシー(本城)/イッシー(原田)
【コラム】北米のレイク・モンスター(山本)/【コラム】懐かしの川口浩探検隊(横山)

【第四章】1980年代のUMA事件
モケーレ・ムベンベ(皆神)/天池水怪(チャイニーズ・ネッシー)(中根)/ヨーウィ(本城)/タキタロウ(蒲田)/リザードマン(本城)/ナミタロウ(横山)
【コラム】怪獣無法地帯 コンゴの怪獣たち(山本)

【第五章】1990年代のUMA事件
オゴポゴ(本城)/フライング・ヒューマノイド(本城)/スカイフィッシュ(横山)/チュパカブラ(皆神)/ジャナワール(皆神)
【コラム】出現する絶滅動物たち(横山)

【第六章】2000年代のUMA事件
モンキーマン(小山田)/オラン・ペンデク(本城)/ニンゲン(廣田)/グロブスター(横山)/ナウエリート(本城)/ラーガルフリョート・オルムリン(本城)/セルマ(本城)

【第七章】UMA人物事典・UMA事件年表
ローレン・コールマン(小山田)/ベルナール・ユーベルマン(小山田)/ロイ・P・マッカル(小山田)/ジェフリー・メルドラム(加門)/アイヴァン・T・サンダースン(小山田)/實吉達郞(原田)/カール・シューカー(本城)/トム・スリック(小山田)

UMA事件年表(本城)


・武田雅哉 加部勇一郎 田村容子編著『中国文化 55のキーワード』(ミネルヴァ書房、2016年4月10日)

手前味噌ながら、執筆担当した第5章「不思議なものども」の、「31 聖獣と珍獣」では現代の聖獣としての長白山<天池怪獣>を、同「32 怪獣と怪物」では未確認動物・神農架<野人>について言及した。
また第2章「意味ありげな場所でのであい」イントロダクションでは、武田先生も天池怪獣に言及されている。


・伊藤龍平『ネットロア ウェブ時代の「ハナシ」の伝承』

気鋭の伝承文学研究者が、2ちゃん・SNS・動画サイト上の「都市伝説的なもの」がいかに流通・受容されているかを解き明かす。
第7章「「南極のニンゲン」とネット時代の「秘境」について」では、2ちゃん発の未確認動物など、ネット発祥の未確認動物/都市伝説を考察。
ちなみに、「Google Earthを用いた怪獣探し」に関連し、以前某誌に書いた拙稿から関連する一節を引用してくださっており、恐縮。
ボクもいろいろきちんとやらねば……。


・佐藤健寿『ヒマラヤに雪男を探す: X51.ORG THE ODYSSEY アジア編』(河出文庫、2015年4月7日)

『X51.ORG THE ODYSSEY』のアジア部分を、大幅に増補改訂して文庫化。


・高野秀行/角幡唯介『地図のない場所で眠りたい』(講談社、2014年4月24日/講談社文庫、2016年10月14日))

 早稲田大学探検部出身のふたりによる、講談社ノンフィクション大賞同時受賞記念対談集。
 探検部時代のこと、探検そのものについて、探検ノンフィクションについて語り尽くす。
 自身の作品についても解説。もちろん、ムベンベや雪男等、そっちの話もたっぷりと。


・シャルル・フレジェ『『WILDER MANN(ワイルドマン)欧州の獣人—仮装する原始の名残』(青幻社、2013年11月1日)


・根深誠『イエティ ヒマラヤ最後の謎“雪男”の真実』(山と渓谷社、2012年7月5日)


・高野秀行『未来国家ブータン』(集英社、2012年3月30日)


・角幡唯介『雪男は向こうからやって来た』(集英社、2011年8月31日/集英社文庫、2013年11月25日)


・伊藤龍平『江戸幻獣博物誌―妖怪と未確認動物のはざまで』(青弓社、2010年10月)


・高野秀行『アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン』(講談社、2009年9月/講談社文庫、2013年9月)

高野アニキの最新作。今度はベトナムの謎の猿人「フイハイ」、奄美の妖怪「ケンモン」、アフガニスタンの凶獣「ペシャクパラング」を追う!


・伊藤龍平『ツチノコの民俗学―妖怪から未確認動物へ 』(青弓社、2008年8月)


・見越敏宏『私が愛したヒバゴンよ永遠に~謎の怪物騒動から40年』(文芸社、2008年4月15日)

 40年前のヒバゴン騒動時、現地・西城町の町役場で、世界でただひとりの「類人猿係」に配属された当事者の回顧録。
 当時、寄せられた様々な目撃証報告を吟味し、実際に、研究者や探検隊、各種マスコミへの対応をおこなった人物の手記だけに、そこに書かれている内容は極めて貴重で、唯一無二の一級の資料といえる。
 巻頭の「西城町ヒバゴン出没マップ」といい、巻末の「ヒバゴン目撃状況一覧表」といい、どちらも町役場の公式記録に残されたデータですから、資料性は抜群。
 当時の関係者自身による貴重な記録がこのような形で世に出たことは非常に喜ばしいこと。執筆を決断された筆者の見越氏の心意気には、心から賛辞を贈りたい。


・花里孝幸『ネッシーに学ぶ生態系』(岩波書店、2008年3月19日)

 著者は生態学者で、ネス湖における巨大生物の生存の可能性について、データを積み上げ、湖の生態系の面から分析していく。まず、ネッシーがいると仮定した場合、湖には「植物プランクトン→動物プランクトン→魚→ネッシー」という食物連鎖が成立していることになるとのこと。それぞれの栄養段階にいる生物群におけるエネルギー量は、より上位になるにしたがって、減っていく。
 つまり、ネッシーのような巨大な生物が、ネス湖のような湖の生態系で生きていくには、いったい、どれくらいの植物プランクトンが必要なのかを推定し、科学的データから、明らかにしていこうというわけである。
 湖中の食料の観点から、ネッシー問題を論じる方はこれまでもいたが、これだけ具体的な数字を並べて考察してみせたのは、日本の一般書では、花里氏が初めてではないだろうか。
 著者は、ネッシーが変温動物だった場合、恒温動物だった場合、また、一個体の重量が、100kg、300kg、1tだった場合、というように、条件が異なる状況で、それぞれ、どれだけの個体が棲息可能かを、計算している。
 その結果は、本書を読んでのお楽しみとしておこう。
 惜しむらくは、ネス湖の生物の現存量、生産量のデータがないため、日本の十和田湖のデータから(植物プランクトンの生産量がネス湖に近いだろうという理由で)推測している点なのだが、それでも、本書は、なかなか面白い一種の知的シミュレーションと言えるだろう。

 もっとも、ネッシーの問題は第一章のみ。キャッチーなタイトルとテーマ設定で読者を引きつけるための、いわば、「客寄せネッシー」として、話の導入に使われているに過ぎない。
 本書の大半は、アオコ掃除に潜む問題点から、地球規模でリンの循環について考えたり、湖の水質改善にまつわる、人間側の様々なカンチガイを指摘したり、ハクチョウへの無責任な餌やりが生態系を変える危険性を説いたりと、湖の生態系について論じているのだが、いやいや、こっちの方が断然面白いのである。
 各々の生物は身勝手にふるまいながらも、微妙なバランスをとっている(とるようになる)複雑な生態系の仕組みと、自らもその中に身を置きながら、すでに身勝手にはふるまえないほどの大きな力を持ってしまった人間について、具体的なデータを駆使して考察。
 いやはや、理数系はからきしダメなはずのボクだが、「生物」だけは大好きだった中高時代を思い出して、非常に楽しく読んだ次第である。


・高野秀行『怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道』(集英社文庫、2007年9月)

 前作、 『怪獣記』(講談社、2007年7月)に続き、今回も、ファンには嬉しい未確認動物探検記です。
 ターゲットは、ネット時代が生んだUMA界のニューフェイス、インドの怪魚ウモッカ。
 高野氏が、さくだいおう氏の人気UMAサイト、「謎の巨大生物UMA」に寄せられた怪魚の情報を知ったのが、今回の発端です。サイト運営者、情報提供者、専門家への取材から始まり、現地調査へ向けての、語学学習、人脈作りや、情報提供を呼びかけるのビラ作成、聞き込み用のウモッカのトゲ模型制作、発見した場合の郵送先(鑑定依頼も)や郵送手段の確保等々、個人の怪獣探しにあたってはかくあるべしという、周到な準備が進められていきます。
 その過程が、例によって軽妙な筆致で綴られ、グイグイ引き込まれます。夢中で読み進め、気付けば、すでに本の半分。
 ん?
 まだ現地探検が始まらないのに、もう半分?
 若干の不安をもって、ページを繰ります。そして、いよいよインド到着という段になって、
高野氏にとっても、読者にとっても、まったくもって想定外の展開が待ち受けていたのでありました!(後から思えば、タイトルにヒントが隠されていた)
 ここから先は、読んでからのお楽しみとしておきますが、前半の、探検を前にした高揚感から一転、雰囲気がガラリと変わって、怪獣探検とは別次元の物語が展開していくのですが、それがまた、なんとも楽しく(いやご本人には災難ですけど)、ボクは何度も本を落としそうになるくらい爆笑いたしました。
 読者からすれば、何というか、本場のカレーを目当てに本格インド料理店に入ったはずなのに、なぜかメインディッシュにカレーうどんが出てきて、でもそれがまた絶品の美味さだった……とでも言うべき、アンビリーバブルな感動をもらった感じです。
 前著とはまったく異なる傾向の作品ですが、未確認動物好きの期待は裏切りません。ぜひ、ご賞味あれ!


・高野秀行『怪獣記』(講談社、2007年7月 講談社文庫、2010年)

 ハラハラ、ドキドキ、ワクワクしっぱなしで、一気に読んでしまった。今回、高野さんが捜索に向かったのは、謎の怪獣・ジャナワールが棲むといわれる、トルコのワン湖。ネットで話題となったジャナワール動画の真贋を確かめる、というのが、今回の調査の発端だが、調べ始めるうちに、意外な事実が次々に発覚! 現地へ飛び、怪獣事件に関わった人々、宗教組織に属する大学教授や、極右の政治家や、うさん臭い観光ボート経営者、等々、ひとクセもふたクセもあるような人物から、ワン湖周辺の純朴な地元民(目撃者含む)たちまで、次々とアタックしていくのだが、その精力的な取材には、いつもながら脱帽である。
 そして、ついには高野さん本人も、怪獣を目撃!? 立場は一転、取材する側から、される側に!? クライマックスには、「未確認動物調査はかくあるべし」とでもいうべき、体を張った、まさに捨て身の湖探索まで決行する。
 あまりネタバレすると、みなさんが読む際の興味をそこなうので、このくらいにしておくが、ラストに向かって、まさかまさかの興奮の展開が待っている。読んで損はしない、間違いなくオススメの一冊。プロカメラマン森清氏による、トルコの写真もスバラシイ!

 さて、今回の調査では、現地で様々な人に取材するうちに、怪獣騒動の背後に潜む、複雑な問題が見え隠れする。ボクが特に興味深いと思ったのは、「怪獣騒ぎは、クルド人問題を隠蔽しようとする政府のプロパガンダだ」と話す、ワン湖周辺出身の青年の言葉。これは、実際に現地の社会学者が唱えている説でもあるようだ。詳しくは本書をお読みいただくとして、洋の東西を問わず、未確認動物騒ぎのカゲには、往々にしてこのような政治的な背景が潜む場合があるものである。もちろん、それがコトのすべてではなく(極端に傾くと、変な陰謀論になりかねないし)、いろんな立場の人間の、複雑な思惑が絡みあっての「怪獣騒動」なワケだが、ココ、いろいろ注意したい点ではある。


・佐藤健寿『X51.ORG THE ODYSSEY』(夏目書房、2007年5月、新装版2008年12月)

 ほぼ全ページを、美しいカラー写真が飾り、オカルトをネタにした本とは思えないくらい、実にアートな作り。パラパラとめくって、写真をながめているだけでも飽きない。UFOや未確認動物にまつわるミステリースポットを巡った「芸術写真集」としても、充分通用するほどの一級品なのだが、本書の本当の凄さは、著者の行動力・取材力・資料収集能力の確かさに裏打ちされた、各ミステリー現象への考察の明晰さにある。
 章立ては、第 I 部 北米編(エリア51、UFO)、第 II 部 南米編(エスタンジア)、第 III 部 アジア編(シャンバラ、雪男) といった具合。
 ボクはまず、アジア編から読み始めたのだが、何度も唸ってしまった。こんなに読みごたえのある雪男論は、本当に久々。最近話題になった根深誠氏の「ヒグマ説」に一定の同意を示しつつも、シェルパ族の語るイエティとメティの区別に着目し、そこからチベット神話の中に、現在の雪男伝説の源流を求めていく過程は、エキサイティングでスリリング。東西の文献に精通し、さらに現地取材で情報を収集しており、説得力も抜群。ボクも改めて、雪男文献をいろいろ再検証してみたくなった。
 ちなみに、映画や漫画に描かれた獰猛な雪男イメージについて語る中で、さりげなく幻の封印作品『獣人雪男』のポスター写真を、(一切の説明無しに)コッソリ使っちゃうところも素敵(東宝は今では写真の露出も許さないはずだが……)。


・佐久間誠『謎の未確認動物UMA 既存のUMAに対する概念が変わる科学的解説』(桃園書房、2007年5月)

 知る人ぞ知る人気UMAサイト「謎の巨大生物UMA」の書籍化。 著者は生物を専門にされていた方で、その分析は、昨今のオカルト志向のUMA本、妖怪志向の幻獣本とは一線を画す。あくまで生物学的見地から、様々なUMA事例にメスを入れ、正体はこの生物かも、あるいはこんな現象かも、
と、次々にまな板の上でさばいていくのである。その結果、UMAの実在に疑問符をつけることも多くなりますが、それはそれで実に痛快。また逆に、巷で否定的な結論が出されている事例についても、今一度見直しが必要なことを訴える考察(ニューネッシーとか)もあり、おおいに考えさせられる。このような科学的なデータを駆使した正体分析といったものは、怪獣の「物語」ばかりにのめり込む文系の僕には弱い分野なので、読んでいて、大いに知的興味をそそられるものがある。
 タイトルに「科学的解説」とあるが、著者の語り口は、極めて(というかメチャメチャ)柔らかいので、オススメ。ムベンベ探検で著名な高野秀行氏との対談も収録。佐久間氏と高野氏の間で盛り上がっているインドのウモッカ探検には、ボクも興味津々だ。
 ただ、これは編集側の問題だと思うのだが、レイアウトだったり、文章の並びだったり、サイトの内容を書籍化する際の「難しさ」みたいなものも感じた。
 とにかく、こういった、生物学としての「未確認動物学」は、昨今の妖怪学の一部としての「幻獣学」と並行する形で、どんどん盛んになったら面白いと思う。


・田中雅司『未確認動物UMAの真実』(小学館スクエア、2006)

COMING SOON!


・U-MAT『世界UMA-未確認生物-探検記』(ミリオン出版、2004)

これまでのUMA本とは一線を画す意欲作。
「U-MAT」とは、怪獣特捜チームの名称で、「UMA」と、「帰ってきたウルトラマン」の怪獣退治組織「MAT」から命名とのこと。このあたり、何となくボクと近いセンスを感じちゃいます。
UMA本にはありがちなUMAそのものの写真は、本書には一切ない。そのかわり自分の足で現地を取材(探検)し、その周辺部の事象(例えば現地のUMAグッズなど)をこれでもかと紹介している。UMAの存在を、現地の人間達がどのように受容(あるいは利用)しているかを知るうえでは、非常に興味深い。取り上げているUMAも、ネッシー、サスカッチなどの海外メジャー系はもちろん、日本のUMA(クッシー、イッシー、ツチノコ等)も、ほぼ網羅している。
巻末の、UMAを扱った書籍・映画の紹介コーナーは有用。70年代に描かれたサスカッチの漫画の採録もあって楽しい。全体的に、サブカルとしてのUMA文化を概観できている点、このジャンルの新たな可能性を見た気がした。難を言えば、記述されたUMA情報の元ネタなど明記してくれていれば助かったのだが、高望みか。


・高橋好輝ら編『2003イエティ捜索隊全記録』(イエティ・プロジェクト・ジャパン、2004年10月)

 2003年に朝日新聞社の後援でイエティ(雪男)探しをした、日本人探検家からなるグループ2003イエティ・プロジェクト・ジャパンの活動報告書『2003イエティ捜索隊全記録』がまとめられ、このたび購入可能になりました。とは言っても、残念ながら一般の書店などでは買えません。ほしい方は、電子メールで同プロジェクトへ直接注文してくださいませ。
詳しくは、同プロジェクトの公式HP「2003イエティ捜索隊」をご参照ください。
 ボクも早速申し込んだところ、イエティ捜索隊の高橋好輝隊長から直々にお返事メールをいただきました。ご丁寧にどうもありがとうございます。
 探検時の詳細なデータをはじめ、写真も豊富。時系列に沿った探検記のほか、隊員たちの手記も充実しており、実に貴重な資料なのであります。ご興味のある方はぜひ。


・木乃倉茂『神秘の現世動物ツチノコの正体』 (三一書房、2002

 帯のタイトルは、こうです。ツチノコを飼育して、観察して、記録にまとめた男がいた!
 ね、魅かれちゃうでしょ?(ボクだけか) 死体を見つけて「捕まえた!」と言っているのとは、ワケが違います。
 戦時下の昭和17年、日本軍が、長野県の山中で山岳工事を行った際、発見したその生物「野槌」について、著者の祖父に当たる人物が、詳細な観察日記をつけていたとのこと。
 同書は、あくまで、その日記の旧仮名遣いや難解な言い回しを、現代風に改めたもの、というスタイルをとっています。
 その形態や行動なども、詳細に記録されているのでありますが、解剖図や、骨格標本図や、飼育槽の中で写したとされる、
生きている時の全身写真など、(本物なら)実に貴重な図版も惜しみなく掲載されているのです。
 しかしその骨格標本は、戦時下の混乱で、現在も行方しれずとのこと。なんか、北京原人ミステリーを彷彿とさせますねぇ。
 やけに具体的な記述(生物としてのツチノコの描写とか)ばかりの同書ですが、この著者は、決して、ツチノコの存在を全面的に肯定しているわけではありません。そういうロマンの必要性は理解しつつも、この本は、あくまで祖父の日記に基づいているだけ、というスタンスですね。
 うまいエクスキューズです。
 書かれている内容は、どこまで本当かわかりませんし、突っ込もうと思えば、いくらでも突っ込めるのですが、好き者にはそれなりに楽しめる珍品となっております。
 ただ同書の最終章の一節「生命の輝きと種の保存について」で、なぜか文明社会の進歩を否定的にとらえると、いきなり、核やテロの恐怖、環境破壊の問題に話題が飛躍し、今後の人類は“本能”と“知性”の両面を、コントロールしていくことで、真の人間らしさを築き上げる努力が必要となる。と言いだすにいたっては、少々話を拡げ過ぎかなぁ、と思いましたが……。


・手嶋蜻蛉『神秘の現世動物ツチノコの正体』(三一書房、2002)

COMING SOON!


中根研一『中国「野人」騒動記』(大修館書店あじあブックス、2002)


 拙著。手前味噌で恐縮。
 中国における70~80年代の「元祖“野人”ブーム」と、90年代以降に観光開発の目玉として人為的に騒動再燃がしかけられた「世紀末“野人”騒動」の顛末をお知りになりたい方はどうぞ。
 現代の“野人”をめぐる言説を拾い集め、注意深く分析。野人の目撃報告等を再検討し、古代中国の伝説から現代の小説・漫画・演劇に到るまで、その文学的な背景についても考察した。“野人”が実在するかどうかという問題はひとまず措き、主に「どのような姿で表現されるのか?」「何故そのような物語が語り継がれてきたのか?」といった問題を取り上げ、中国人が描く「“野人”イメージ」を探ることを試みている。
 とはいえ、本書の前半は、実際に神農架の山中で“野人”探しごっこに興じた、川口浩探検隊的ノリの現地取材(山中での捜索、現地関係者へのインタビュー)が占めている。筆致も努めて大仰なテレビナレーション風にしてみた。そのドタバタ探検取材レポートだけでも、パロディとして楽しんでいただければ幸いである。「愉しげな探検ごっこ」とのレビューも、光栄である。

 これを書いた当時は、ボクも20代。今にして思えば、言い足りないこと(言わなきゃよかったギャグ)や、考察不足な部分もあり、若干の悔いが残るが、今後の課題としたい。本書上梓後も様々な資料を入手。『饕餮』、『火輪』誌等に散発的に書き散らしてはいるものの、いずれきちんとまとめ直したい。


高野秀行『怪しいシンドバッドー愛と野望のアジア・アフリカ・南米』(朝日出版、1997)
 *改訂文庫版『怪しいシンドバッド』(集英社文庫、2004)


 同書の第二部第七章に、「季節はずれの野人探し【神農架編】」と題し、52頁にわたって高野氏の神農架冒険旅行がある。ボクの神農架取材より、実は3年も早い。
 高野氏は言う。「私の目標はただ一つ、この地域に「野人が生息しているかもしれない」という雰囲気、あるいは「野人存在のリアリティー」みたいなものを肌で感じることにあった」(同書、258頁)
 拙著の「はじめに」は、けっして高野氏の記述をパクったわけではありません……と、思わず弁明したくなるほど、高野氏の神農架探検にかける思いや、“野人”へのスタンスは、ボクのそれと、おおいに重なっている。とは言え、腹を壊し、40度近い高熱を出しながらも、神農架で探検・取材を敢行するなど、バイタリティーの面では、ボクなんかよりも数段タフ。
 また、高野氏もボクも、ほぼ同じような探検ルートを辿っているのだが、高野氏の場合、ボクが会い損ねた袁裕豪氏には会えたけど、ボクが会えた胡振林氏には会い損ねたりたり等々、微妙にすれ違っているのも、奇妙な偶然というか何というか、非常に面白い。
 短編ながらもただのオモシロ探検記に終わることなく、高野氏は“野人”の正体の可能性について、未知の動物説、山の民説、見間違い説など、3段階に分けて考察しておられ、中野美代子先生や井波律子先生の文献を引用するなど、非常に読みごたえがある結びとなっている。同書は、やたら面白く、とても熱く、そして非常に客観的な神農架“野人”探検記なのだ。
 もちろん“野人”以外にも、辺境での痛快な冒険譚が山盛り。第二章では、ムベンベについても「非完結編」という形で紹介。怪獣好きには、ぜひともお奨めしたい一冊である。


・佐瀬稔著『残された山靴』(山と渓谷社、1999)
・越後屋浩二著『冒険家の魂 小野田元少尉発見者鈴木紀夫の生涯』(光星社出版、1992)
・小野田寛郎『わが回想のルバング島』(朝日新聞社、1988)




 ここでは複数の書籍を挙げ、冒険家・鈴木紀夫と雪男について考える。
 『残された山靴』は、植村直己など、8人の登山家の最期を綴ったノンフィクションです。その中に、「雪崩に埋没した雪男への夢 鈴木紀夫」の一章があったことが、購入の理由でした。
 鈴木氏は、1986年、ヒマラヤで雪男捜索中に遭難死した方です。生前、鈴木氏が残した著書は、『大放浪』のみ。同書は、氏が小野田氏を発見した1974年に、文藝春秋社より刊行され、現在でも朝日文庫で入手可能です。
 大学時代、彼はバックパックを背負い、ヒッピーさながら世界放浪の旅へ出発。3年9ヶ月に及ぶ旅から帰国後、ルバング島に旧日本兵が生き残っているらしいと聞いた鈴木青年は、バイトで金を貯めると、ルバング島へヒョイっと飛んでいってしまいます。
 島のジャングルでキャンプを張り、とうとう小野田氏と接触。警戒心から、それまでは誰の説得にも応じなかった小野田氏を、この24才の青年は、ついに森から連れ出すことに成功するのです。
 『大放浪』は、小野田氏の帰国の場面で終わっていますが、あとがきで、鈴木はこう言っています。
 小野田少尉、雪男、パンダを見つけることがボクの夢である……、そう友人に語ったことがあるが、それは未知への挑戦であり、神秘に包まれたベールをはぐ真実の探索、そういう意味で言ったものだ。
 もし雪男を見つけ出し、逆に頭からかじり殺されても幸せを感じることができるだろう。
 この時点での彼が、どこまで本気で「雪男」の名をあげたのか、今となってはわかりません。しかし、一夜にして国民的ヒーローとなってしまった24才の青年が、初めての自著に記したこの一文を、マスコミは放っておいてはくれませんでした。
 生前の鈴木氏の日記の一部が、『文藝春秋』(1987年12月号)誌上に公開されましたが、そこで彼は、
 ボクは次に雪男探しに行くんだと興味本位でずいぶん騒がれた。しかしマッピラ御免という心境だった。もう人のおだてに乗るものか、と思っていた。
 と記しています。
 最初は、雪男の存在さえ、信じていなかったようでもあります。しかし、一度英雄となってしまった彼は、もはや、普通の青年の生活に戻ることは、できなくなっていました。直後の日記では、こう続けています。
 だが、自分の進路に迷い、アイデアの浮かんでこないことにいらだち、再び自分自身を見つめ直す必要にせまられ、
そのためにも静かな、長い時間がほしかった。せっぱつまって、それならいっそのことネパールに行って、のんびり雪男でも探してみようかという気になった。
 そして、雪男についての文献を漁っているうちに、彼はその実在を確信するようになったのです。

 その後の鈴木氏の、計6回にも及ぶ雪男探検活動の模様は、越後屋浩二著『冒険家の魂 小野田元少尉発見者鈴木紀夫の生涯』
(光星社出版、1992)に詳しく紹介されています。
 同書には、鈴木氏生前の日記や手紙、関係者のインタビューがふんだんに掲載されており、かなりの部分、鈴木氏の本音に接することができます。
 読んでみると、小野田さん発見以後、常にマスコミに囲まれ、追いつめられていく彼の苦悩が、痛いくらい伝わってきますね。
 雪男探しを決断したのは、確かに鈴木氏本人かもしれません。しかし、彼を駆り立てたのは、無責任なマスコミであったことが、同書からはうかがえます。
 次第に本気で雪男探しにのめり込んでいく鈴木氏……。1975年の第1回目の探検で、雪男の親子らしき、複数の影を目撃してしまったことが、彼のその後の運命を決定づけてしまいます。
 以後、結婚し(新婚旅行もヒマラヤで雪男探し)、二児の父となった鈴木氏は、第5回目の探検隊(1980年)を終えると、しばらくは雪男探しを封印。子どもが成長するまではそばにいよう、という思いがあったようです。
 そして真面目に就職し、日本で腰を落ち着ける日々が続きますが、やがて彼は、6度目のヒマラヤ行きを決断するのです。

なぜ、そこまでして?
なぜ、愛する家族を置いてまで?

 著者の越後屋氏は、断言することはできないが、としながらも、80年代に繰返し日本でも報道された、中国の“野人”捜索のニュースも、鈴木氏をおおいに焦らせた一因ではないか、と言っています。
 かりに、先に中国の“野人”が発見されたならば、ヒマラヤの雪男を捕まえても二番煎じになってしまう……。そんな恐れが、鈴木氏の中にあったのではないか、というわけです。
 そして、その第6回目の探検(1986年)で、鈴木氏は雪崩に遭い、帰らぬ人となりました。
 彼は結局、雪男を見つけられたのでしょうか?
 鈴木氏慰霊のためヒマラヤを訪問した、かの小野田寛郎氏はその著書、『わが回想のルバング島』(朝日新聞社、1988)で、
以下のように記しています。
「雪男」……何かがあった。それをつきとめるため、鈴木君は前進した。
そのために前進して不帰の人となったのなら、彼は満足していると考えてみる。またそうでありたいと思った。

 鈴木氏は生前に、一度、ミュージカルの舞台に立ったことがあります。元冒険家の喫茶店主人という、現実の鈴木氏そのままの役どころ。
 その舞台で彼は、子供たちを前に、「ラ・マンチャの男」の、「見果てぬ夢」( The impossible dream)の一節を、高らかに歌いあげたそうです。
 「見果てぬ夢」を追い、37才の若さで、雪山に倒れた鈴木紀夫氏。でも、雪男の一番近くにいるのだから、幸せだったのでしょうか……。


・高野秀行『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫、2003)
*旧タイトルは『幻の怪獣・ムベンベを追え』(PHP研究所、1989)


 アフリカはコンゴのテレ湖に棲むといわれる怪獣、モケーレ・ムベンベを探しに様々な苦難を乗り越え、現地へ飛んだ早稲田大学探検部の探検記録。最近、文庫で再刊された。1989年当時、このニュースをリアルタイムで知ったボク(高校生)は早稲田に入ったら絶対探検部に入ると心に決めていたものである(結局ご縁はなかったが)。
ロマンを求めて、ジャングルを進む彼らだが、決して恐竜の実在を盲信することなく、現地人の話を冷静に分析し、その正体を考察するなど、「作り上げられるUMA像」の問題を考えるうえで、かなり示唆に富んだ内容となっている。ボクのお勧めの一冊である。


・平川 陽一『ネッシー60年の軌跡それでも生きている 』 (ワニ文庫、1994)


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・堀江豊『恐竜探検物語 生きていたバイカルザウルス』(東洋経済新報社、1993)


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・杏子『伝説の水路ーネッシーを探してー』(角川書店、1993)


 著者は、あの元バービー・ボーイズの杏子さん!
 この方、UMA方面にもかなりの関心があるみたい。ネッシーの伝説に魅せられ、ついには現地スコットランドへ。内容は、杏子さんのネス湖周辺での探検(観光?)記なのだが、現地の人々の息遣いが聞こえて来るような筆致で、良質のエッセイとなっている。とはいえ、ネッシーに関する注も豊富で、その正確さにビックリ。ネッシー研究家へのインタビューを行ったり、ネッシー写真の有名どころもちゃんと紹介(掲載)したりしているところが憎い。関係ないですが、バービー時代の「暗闇でダンス」、ボクかなり好きです。


・山口直樹『幻のツチノコを捕獲せよ!!』(学研ムーブックス、1989)


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・山本素石『幻のツチノコ』


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・山本素石『逃げろツチノコ』(二見書房、1983/復刻版は山と渓谷社、2016年10月20日)


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・宇留田俊夫、南川泰三『ドキュメント野人は生きている 中国最後の秘境より』(サンケイ出版、1981)


 1980年の中国科学院の“野人”調査隊に同行し、現地神農架へ取材したフジテレビ・スタッフの記録。いわゆる中国の“野人”騒動をリアルタイムで報告した、日本で唯一の書籍である。この年の“野人”調査は、全世界に報道され、注目を集めるなか行われていたが、外国のテレビ・カメラがこれほどまで内部に入り込んだケースは、他にはない。なお、日本側には、京大霊長類研究所の和田一雄氏などが参加している。
 本書を読んでみると、同じ中国科学院内でも、肯定派・否定派に分かれ、決して一枚岩でなかったことなどが分かり、興味深い。取材をめぐっての複雑なトラブルなども赤裸々に描写されており、中国で出版された多くの「正統派」“野人”本ではうかがい知れない、中国側の裏事情のようなものも見えてきて、楽しい。ちなみに、このフジテレビの特別番組は1980年の12月に放送された。


・尾崎啓一『雪よ雪山よ雪男よ』(時事通信社、1976)


 筆者は北大出身のプロスキーヤー。
 本書は3つのパートからなり、第3部に「雪男よ」と題し、自身の参加した雪男探検隊(別項であげた谷口正彦氏を隊長とする1971年の探検隊)の活動について記している。谷口隊長に「重いから」と反対されつつも、「機動力になるから」とスキー板を持参して探検してしまうところ、さすがプロである。


・長谷川善和『怪物ネッシーを見た!?』(日本交通公社出版事業部 、1976)


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・実吉達郎『謎の雪男追跡! 未確認動物か? 新人類か?』(徳間書店、1975)


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・康芳夫『ネッシーはそこにいる—ネス湖国際探検隊の記録』(浪曼、1974)



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・谷口正彦『雪男をさがす』(文藝春秋、1971)
 *改題文庫版『まぼろしの雪男』(角川文庫、1974)


 雪男の伝説に魅せられた谷口氏は、それまで勤めていた日本テレビを32歳で退社。探検隊を結成し、憧れのヒマラヤへと乗り込む。『天国に一番近い島』で有名な作家・森村桂氏の夫である谷口氏の探検は、当時マスコミでも話題になった(らしい)。
 雪男をおびき寄せようと、雪山で日本の童謡(「お猿のかごや」等)をガンガン流したり、ユニークな試みに爆笑(探検の中にも遊び心を忘れない谷口氏は、尊敬に値する)。同書では、簡単な雪男史や、ネパールの教科書にも載せられているという雪男の民話なども紹介されている。
 雪男に魅せられた谷口氏は、本書を上梓した後、第2回探検隊も組織したが、その結果「雪男はいそうにない」との結論にいたっている。その心境は、後に加筆訂正して改題出版した文庫版『まぼろしの雪男』(タイトルに「まぼろし」と明記しちゃった)の後書きに記されている。しかしそれでも、雪男の幻影を生み出した人間は素晴らしい、と讚えている氏に、おおいに共感せずにはいられない。


・沼田茂『世界の怪獣』(大陸書房、1969)



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・徳岡孝夫『ヒマラヤ 日本人の記録』(毎日新聞社、1964)


 1963年に『毎日新聞』夕刊に連載されていたもの(それにしても、毎日新聞社はやけに雪男に絡んでるなぁ)。
ノンフィクションの登山記なのだが、第14章の「いるか、いないか」において、小説風に架空の「雪男裁判」を展開させている。否定派・肯定派それぞれ弁護人や証人も登場させ、激しいバトルが繰り広げられており、楽しい。全体から見ると、短い一章だが、読みごたえはある。


・林寿郎『雪男 ヒマラヤ動物記』 (毎日新聞社、1961)


東大の小川鼎三教授を隊長とする、日本初の「雪男学術探検隊」の記録。同探検隊は、戦後初の海外への大規模な探検隊であった。著者の林氏は、同探検隊に参加した多摩動物公園の園長さん。
現地ヒマラヤでの活動もさることながら、探検隊結成までの経緯も、非常に興味深い。


・竹節作太『ヒマラヤの旅』(ベースボール・マガジン社、1957)


 以下に挙げた『ヒマラヤの山と人』(1955)と同じく、毎日新聞社の竹節氏の著書。マナスルでの四度にわたる活動の記録をまとめたものだが、やはり「雪男」の章を設けている。その内容は、前著とほとんど同じ。


・竹節作太『ヒマラヤの山と人』(朋文堂旅窓新書、1955)


 筆者は毎日新聞社の記者。自身が参加したマナスル登山隊の記録なのだが、「雪男」という題で、一章設けている。騒動初期の雪男を取り巻く状況を知るうえで、興味深い内容である。雪男と並べて、ヒマラヤに現われたという「“ゴジラ”以上の大怪物(同書60ページ)」の話も紹介している。
 また、竹節氏が1952年のマナスル踏査隊に参加した時に発見した、謎の足跡についても記している。おそらく日本人で初めて、その著書で雪男の足跡を発見したことを表明した方ではないだろうか。


実録・探検ドキュメント・個別研究(邦訳)

・ダニエル・C・テイラー著、森夏樹訳『イエティ 雪男伝説を歩き明かす』(青土社、2019)


本書は、イエティの謎に挑み続けた著者の、長年にわたる調査の記録である。と同時に、その過程で発見した「手つかずに残された野生」を保護するため、人間が野生を管理する場所としての国立公園を、ネパールと中国に設立するまでの物語でもある。
 *『週刊読書人』2019年4月19日号に書評を書きました。
 ご参照ください→『週刊読書人』ウェブ2019年4月19日号

・ダニエル・ロクストン、ドナルド・R・プロセロ著/松浦俊輔訳『未確認動物UMAを科学する モンスターはなぜ目撃され続けるのか』(化学同人、2016)



懐疑論の立場からから、その真贋論争を検証。骨太のUMA研究本。個人的には「大衆文化におけるイエティ」「未確認動物学サブカルチャー」あたりに興味津々。


・レドモンド オハンロン著/土屋 政雄訳『コンゴ・ジャーニー』〈上〉〈下〉(新潮社、2008)


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・ロバート・マイケル・パイル著/竹内和世訳『ビッグフットの謎 怪物神話の森を行く』(三田出版界、1997)


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・周正著/田村達弥訳『中国の「野人」類人怪獣の謎』(中公文庫、1991)


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・ロイ・P・マッカル著/南山宏訳『幻の恐竜を見た』(二見書房、1989)


 アフリカはコンゴのテレ湖に棲むという、モケーレ・ムベンベを追ってジャングルを進む、(その筋では有名な)マッカル教授の探検記。しかし、彼らは結局テレ湖には到達できずに終わる。現地への聞き込み調査で、その姿は「ステゴサウルス」だったと語る現地人に、そんなはずはないと怒りまくるマッカル教授は、ムベンベは「アパトサウルス」型だと信じて疑わない。そのムベンベ像だって、もともと西洋の探検隊によって持ち込まれた「作られたイメージ」であるのにね……。
はじめに「恐竜生存説ありき」の探検隊ではあるが、本書はある意味期待を裏切らないオーソドックスな探検記なので、ワクワク度は高い。また、本書に記録された様々な証言は、「ムベンベ・イメージ」が、現在どのように普及しているかを知る上では、かなりの価値を持ってくるであろう。


・キャリー・ミラー著『怪獣と恐竜』(佑学社、1978)


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・ニコラス・ウィッチャル著/中山善之訳『ネス湖からの最新調査報告 ネッシーの謎』 (ケイブンシャ、1976)


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・アンガス・ホール著/桐谷四郎訳『ネッシーと雪男』(学研、1976)


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・ミッチェル・グラムリー著/浜洋訳『謎の巨人族』 (大陸書房、1975)


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・ジェイムズ・B・スィーニ著/日夏響訳『図説・海の怪獣』 (大陸書房、1974)


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ダニエル・コーエン著/小泉源太郎訳『怪獣の謎』(大陸書房、1973)



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・ティム・ディンスデール著/南山宏訳『ネス湖の怪獣』(大陸書房、1973)


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・ジョン・A・キール著/南山宏訳『四次元から来た怪獣』(大陸書房、1973)
 *改題文庫版『不思議現象ファイル』(ボーダーランド文庫、1997)


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・F・W・ホリデイ著/和巻耿介訳『古代竜と円盤人』(大陸書房、1973)
 *改題文庫版『奇現象ファイル』(ボーダーランド文庫、1997)


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・S・ラウィッツ著/小野武雄訳『ゴビ砂漠を越えてーヒマラヤに住む雪男ー』(鳳凰社、1958)


 シベリアの政治犯収容所を脱走し、ヒマラヤを越えてインドへ逃げ延びたポーランド人の、壮絶な体験記。なので、厳密には雪男探検記ではない。クライマックスとなる雪男との遭遇は、最終章である第22章に、ちょこっとだけ描写されている。極限状態に追い込まれた人間の目に映った怪物は、しかしその時点では「雪男」であるとは認識されていない。筆者は、注記のような形で、「あとになってから」その動物が雪男と呼ばれるものだと確信した、ということを記している。


・レーフ・イザード著/村木潤次郎訳『雪男探検記』 (ベースボール・マガジン社、1957)
*再刊版(恒文社、1995) *抄訳版(ベースボール・マガジン社秘境探検双書、1963)


イギリス、デイリーメール社が組織した、雪男騒動後では世界最初期となる探検隊の報告。


文化誌研究(総論)・懐疑派による検証・考察その他(文化誌・科学史・社会学・博物学・民俗学・サブカルetc.)

・皆神龍太郎/志水一夫/加門正一『新・トンデモ超常現象60の真相』(上)(下)、(2013年3月21日)




・初見健一『ぼくらの昭和オカルト大百科 70年代オカルトブーム再考』(大空ポケット文庫、2012年11月20日)


 特に子供向けのメディアを中心に花開いたオカルト文化について、当時の世相を考察しながら再検証した一冊。サブカル的な背景へも注がれるその視座は、ボクも非常に重要だと考えるものである。
 UMAとUMA番組についても第二章で50ページ以上を費やして言及。ただこの方、「雪男……わりとどうでもいい」派らしく、つれない言葉が並ぶが、さくだいおうこと佐久間誠氏や、以前の田中啓文氏もそうだが、UMA好きでも雪男系が苦手という方は多いということを思い知る。……といいつつ、初見氏は11ページにわたって雪男系UMAの紹介を続けている。


・ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)『謎解き超常現象 II』(彩図社、2010年5月20日)


 好評のシリーズ第二弾。第5章に「怪奇、未確認生物の発見『UMA騒動』の真相」を載せる。「ニュー・ネッシー」「エイリアン・フィッシュ」「ツチノコ」「ゴラム」「獣人モノス」の5ケースについて、検証している。ちなみに、本章の執筆はいずれも横山雅司氏。
 最初に巷でまことしやかに語られている「伝説」を紹介し、その「真相」を考察するというスタイル。調査の手続きはクールに、しかし対象への情熱はホットに、というのが大いに共感できる。基本的には、こうありたいものである。


・AIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)『謎解き超常現象』(彩図社、2009年5月)


 様々な怪奇現象の謎解きを、地道な調査から具体的な証拠を吟味し、客観的に考察を加えるAIOSの方々の論考集。UMAについては、モントーク・モンスター、スカイフィッシュ、巨大イカ等が扱われている。
いわゆる通説となっている「伝説」を鵜呑みにせず、一つひとつを真摯に検証して、「真相」を探っていく姿勢は大いに学ぶところがある。


と学会著『と学会年鑑KIMIDORI』(楽工社、2009年5月20日)


 本書におけるUMA絡みとしては、皆神龍太郎氏が『あなたの知らない未確認生物本当にいる!UMAの正体 (コアコミックス)』を、藤倉珊氏が『未確認生物FILE?今日から会える!! 』を山本弘会長が『川口浩探検隊スペシャル (Gコミックス)』を、をそれぞれ取り上げている。
 ボクもこの3冊については、以前、拙サイトに書きましたが、まぁやはり、皆さんもボクと同じようなことを考えておられた模様。コンビニ本というジャンルは、ネタの宝庫なのだろうが、大量生産される上、廉価で手に取りやすいこの手の媒体の、(特に若年層への)影響力には興味がある。


・吉田司雄編著『オカルトの惑星 1980年代、もう一つの世界地図』(青弓社、2009年2月)


 1970年代を扱った前作『オカルトの帝国』に続き、今度は1980年代を、様々なオカルト事象をキーワードに読み解く、意欲作。
第6章・伊藤龍平「台湾のオカルト事情」は、台湾におけるオカルト文化を紹介。日本の漫画・児童書の翻訳本を通じて、台湾にUMAなどの概念が浸透していった様を詳細に説明しており、実に興味深い論考。


・グリニス・リドリー著/矢野真千子訳『サイのクララの大旅行 幻獣、18世紀ヨーロッパを行く』(東洋書林、2009年2月)


 8世紀のヨーロッパに連れてこられたサイの冒険(?)物語(ノンフィクション)。見せ物として初めてサイを見る人々にとっては、当然、それは未知動物であり、怪獣にほかならない。その遭遇は、実にエキサイティング。


・『新潮45』2008年9月号掲載、原田実「未確認動物の精神史」


 原田実「未確認動物の精神史」を載せる。
1970年代日本の、都市と農村の接点、マージナルな空間に未確認動物が出没した点についての指摘は興味深い。


・日本科学史学会生物学分科会編集・発行『生物学史研究』No.80 (2008年9月)

 2007年12月9日におこなわれた科学言説研究プロジェクト第4回公開研究会「UMAのいる科学史」、およびその成果をまとめたもので、「特集 UMA(未確認動物)のいる科学史(2007年度シンポジウム報告) 」を載せる。同号の掲載論文は以下の通り。林真理「未確認動物の存在論:「UMAのいる科学史」を論じるにあたって」、下坂英「生物学史と「未発見動物」」、伊藤龍平「未確認動物の民俗学へ-『信濃奇勝録』の異獣たち-」、齊藤純「怪獣もいる科学史」、菊地原洋平「西洋における怪物伝統のなかのUMA」。


・原田実『日本化け物史講座』(楽工社、2008年2月21日)


 ジャンルを細分化し過ぎる最近の傾向に疑問を呈し、あえて未分化のままの怪異の概念を、そのまま用い、それを、日本史の時系列に沿って紹介しようとした一冊。
 本の帯には「妖怪+幽霊+UMA≦化け物」の文字。つまり、現在では「妖怪」「幽霊」「UMA」やその他の名称で呼ばれているものを包括する、より広い概念の呼び名としての「化け物」を持ち出しているのです。
 「まえがき」で、原田氏はこう書きます。
 そもそも現代人が細分化された言葉で呼び分けている様々な概念を、江戸時代から昭和前期にかけての日本人は、この「化け物」という一つの言葉で呼んでいた。細分化されてしまった後の、正確さは増したが狭苦しさを伴う概念ではなく、細分化される前の、未分化で広やかなこの概念にもう一度立ち戻ってみることで、「妖怪」や「幽霊」といった言葉で捉えるのでは見えなかったなにかが見えてくるのではなかろうか。
(同書「まえがき」より)

 英語の"monster"が、ネス湖の怪物やヒマラヤの雪男から、幽霊や怪獣なども指す広い概念を指す言葉として使われているのに、同じような日本語である「化け物」が忘れられているのはモッタイナイとのこと。
 そして、昨今刊行される妖怪本、UMA本は、「その細分化の結果を自明とするか、細分化をさらに推し進めようとするものばかり」であると憂え、細分化の道をいったん引き返すことを提唱しています。これは、柳田から現在まで受け継がれている「幽霊」と「妖怪」の区別や、昨今の「妖怪」から「幻獣(UMA)」を独立させようという動き、等々を指しているものと思われます。
 そして、原田氏は、ヤマタノオロチ、カッパ、狐、天狗、鬼、皿かぞえ、豆腐小僧、狸、ツチノコ、口裂け女を日本の「10大化け物」として、大きく10章に分け、その時代的背景や、由来、その後の展開などを丁寧に紹介していきます。
 もちろん、上記「10大化け物」以外にも、歴史上記録されてきた「化け物」たちがたくさん取り上げられており、かなり文学史的な側面も有しています。
 また、現代の『ゴジラ』に始まる怪獣映画、『ゲゲゲの鬼太郎』『デビルマン』といった漫画作品にまで話は及び、ヒバゴンやニューネッシーといった新しいUMAたちも俎上に上げています。

 日本人が歴史上、どのようなものを「化け物」視してきたかを考える上で、ゆるやかな概念を用いることは、確かに有効な手段かもしれません。結局のところ、その怪異を何という名でカテゴライズするかは、時代の要請で、常にうつろい変わっていくものですしね。
 同一の怪異でも、その時々の解釈で異なるアイデンティティが付与され、全く違うカテゴリーで語られる、ということもあるでしょう。その点には多いに同意です。
 ただ、現在「妖怪」と呼ばれているものはともかく、こと「UMA(未確認動物)」に関しては、それが本当に生物学的に未発見の動物である可能性も(わずかながら)あるわけで、一律「化け物」扱いしていいのかどうか、ちょっと難しい問題ですね。
 まぁ、最近現われる(とされる)未確認動物は、どれも「化け物」チックなものばかりなのは確かですけど。

 ちなみに同書で、個人的に最も面白かったのは、ネス湖の怪物やヒマラヤの雪男は、1960年代にも子供向けメディアで盛んに取り上げられたが、それは、映画やテレビの「怪獣ブーム」と関連してのことだったとする指摘です(当時は「UMA」概念もなく、一律「怪獣」と呼ばれていました)。
 「実話」としてのそれらの存在が、「創作としての怪獣のリアリティを保証する担保になっていた」(同書213頁)
というわけですね。ここらへん、個人的にもう少し調べてみたい気がします。
 それから、もうひとつ、はたと膝を打ったところは、江戸時代に「化け物」ネタを好んで取り上げた、
「黄表紙」について、話題のネタをすぐに書いて大量印刷する、安い黄色の染料で表紙を刷った本である、
というように解説した後で、こう噛み砕いた部分です。
 今でいったら、ペーパーバックスタイルで五〇〇円くらいで店頭に並ぶ、いわゆるコンビニ本です。
並木伸一郎さん監修のUMA劇画とかの類ですね(笑)。黄表紙は大量に流れて大量に消費される、読み捨てられることが前提です。だから現代の化け物好きにとっては、現存しているものは貴重でありがたいんです。
(同書147頁より)

 そうか! コンビニ本は現代の黄表紙か!
 現代の未確認動物本コレクターとして、後世の化け物研究家たちのためにも、これからも、せっせとコンビニ本の蒐集に努めたいと思います(と、お金の無駄遣いを正当化……)。


皆神龍太郎、志水一夫、加門正一著『新・トンデモ超常現象60の真相』(楽工社、2007)


 『新・トンデモ超常現象56の真相』の増補・改訂版。今回、4つほどネタを足して『~60の真相』にしたようであります。書店の同じ棚に、ちょうど前作も置いてあったので、さっそく手に取り、目次をパラパラ繰って比較・確認したところ、増えているのは以下の4つでした。
 「ウエストバージニア州フラットウッズに3メートルの宇宙人が現われた!?」
 「宇宙生物襲来!? ドーバー・デーモンの謎!」
 「インディアンも見た!? ブラウン山の怪光!」
 「オーラが写真に写る!? キルリアン写真!」
 ほかのネタはすべて同じ。う~ん、迷いましたよ。たったネタ4つの増量のために、買うべきなんだろうか、と。思案しながら、ボクは改めて本の表紙とニラメッコです。そこには、古今東西の宇宙人や未確認動物の有名どころが、デザイナーさんによって可愛らしくデフォルメされた姿で並んでおります。チュパカブラもフラットウッズの宇宙人も、定番の図像が模写されております。
 と、ボクの視線は表紙右上の隅にくぎ付けとなりました。そして次の瞬間、ボクはレジに向かって駆けて行ったのであります。なぜなら、そこには紛う方なき、中国の“野人”図像の姿があったからでありました。いわゆる、ジャケ買いってやつです。しかも、その図像ときたら……。長い髪、掲げられた右手、そして……ガッシリとした体格! そう、いわくつきの「ウー型“野人”」(命名ボク)の図像だったのです。これが中国の“野人”を描いたものだとは、どこにも書いてはいないのですが、
このイラストは、“野人”以外のナニモノでもありません!
 このオリジナルの図版自体はけっこう古いものなのですが、あるいは本国で今、このタイプの“野人”像が出回ってるんだろうか?  こりゃ、中国の“野人”関係の近刊書を調べてみる必要があるな。
 このウー型“野人”やその原形となった図像等、その他様々な中国の“野人”図像については、拙稿「姿なき怪獣たちの肖像ー描かれた中国“野人”の想像図を検証するー」(『饕餮』第12号、中国人文学会、2004)や「あなたはだぁれ?〈“野人”図説番外編〉ー“野人”ではなかった「“野人”人相書き」の正体」(『火輪』第23号、2008)をご参照いただければ幸いです。

 勢いで買ったものの、この最新刊の中身では、中国の“野人”について全然扱ってないんですけどね。いいんです、承知の上です。ちなみに、と学会会長、山本弘氏の巻末解説文の内容も旧版と同じ。解説執筆時は2001年だったワケですが、そこで氏は、
テレビのオカルト番組が、一般の報道番組とは異なり、謝罪を求められることもなく、確信犯的に誤報を流し続けている現状を批判し、最後にこう書いていました。
 いつまでもテレビのスタッフに愚弄され続けていいはずがない。インチキ番組に騙されないためには、こっちも知識を深めておく必要がある。知識と懐疑精神こそ、トンデモの病魔に感染しないための免疫なのだ。
 本書を読まれた方は、これからオカルト番組を見る際、別の楽しみ方ができるはずである。視聴者を欺こうとするスタッフを逆に嘲笑ってやる楽しみだ。「お前ら、こんなので騙せるとでも思ってんの? バッカじゃない?」と
(同書巻末の「解説」より)

 なんというか、テレビの健康情報バラエティも一種の「オカルト番組」だったと、ようやくみんなが気づき始めた現在、これと同じ作法で鑑賞するのが、正しい楽しみ方かもしれません。
 とは言え、ボクの流儀は、もうちょっとノリツッコミですけどね。


・一柳廣孝編著『オカルトの帝国 1970年代の日本を読む』(青弓社、2006年11月27日)


 表紙の謳い文句を借りるなら、「隠された知である「オカルト」が白日の下にさらされた1970年代に、私たちはどのような夢を見、熱狂したのかーー。科学的合理主義への懐疑から「新しい科学」として登場することで社会に激震を走らせた70年代のオカルトブームを焦点化し、現代に続く「オカルト的なもの」の始源を照らし出す」という一冊。
 1970年代という時代の中、映画/テレビ/漫画/特撮/児童書/ベストセラー書といったサブカルチャーや各種メディアに現出した数々のオカルト表象を切り取り、丹念に分析した読み応え充分な論文集。


・皆神龍太郎、志水一夫、加門正一著『新・トンデモ超常現象56の真相』(太田出版、2001)


・と学会、山本弘『トンデモ超常現象99の真相』(洋泉社、1997)

・巽孝之『恐竜のアメリカ』(ちくま新書、1998)


  COMING SOON!


・森本哲郎『驚異への旅 新撰「世界七不思議」』(文春文庫ビジュアル版、1988)


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・下坂英 杉山滋郎 高田紀代志著『科学と非科学のあいだ  科学と大衆 (科学見直し叢書, 1)』(木鐸社、1992)



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・庄司浅水『世界の七不思議』(現代教養文庫、1969)


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未確認動物文化一般

・『別冊映画秘宝世界怪獣映画入門! (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) 』(洋泉社MOOK、2013年5月29日)


映画はもちろん、世界の怪獣文化を多角的に紹介。日本の1960年代怪獣ブームの検証や、怪獣漫画&図鑑の考察もズラリ。ハリーハウゼン特集や、子供の頃興奮したブリアンの恐竜画の世界まで!
切通理作氏が「僕らが夢中になっていた怪獣映画の面白さ」として「そんなバカなことはありえないんだけど、でもどこかに本当にあるんじゃないかという感覚」を挙げておられたが、これは非常によくわかる。だからこそ、往年の未確認動物ブームは怪獣ブームと切り離せない関係にあるんだと思う。


・『怪奇・怨霊・宇宙人 衝撃!超常現象映画の世界 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)』(洋泉社MOOK、2010年5月8日)


 70~80年代のジャガーブックスの児童向けオカルト本表紙を思わせるカバーも秀逸な、超常現象映画に特化した映画本。
未確認動物映画については、島本高雄氏の「なぞの未確認生物を追え! 映画でみる世界の珍獣百科 UMA映画千本ノック!」を掲載。水棲獣系・獣人系・幻獣と既知の巨大生物系に分けて、それぞれ隠れた名作を紹介してくれている。
必読!
 こういうこと、本当はボクがやりたかった……。当サイト内の「怪獣図書館」の設立目的も、そういう大衆娯楽の中の未確認動物文化を掘り起こすことにあったのだが、ズボラな性格ゆえ、手を付けられずにいる……。そのうち、時間をとってちゃんと整理したい。
 ちなみに、本書の神武団四郎氏「元祖UMA映画『キング・コング』と謎の猿人映画総進撃!」も、面白い。個人的には、『キング・コング』オリジナル第一作が作られた1933年が、ネス湖のネッシー騒動元年でもあり、同時期に大海蛇騒動もまた取り沙汰されるようになったということは、UMAと映画表現の切っても切れない関係として、記憶しておくべきだろうと思っている。
映画こそは、まさにUMAに生きる場所を与え続けてきたメディアなのだ。


・猫柳けいた『UFOとUMA現代神話論』上  (希林館、2002)


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非日常研究会『空想生物の飼い方』(同文書院、1999)


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怪物・モンスター文化一般

・ジョン・ランディス 著、アンフィニジャパン・プロジェクト 翻訳『モンスター大図鑑 SF、ファンタジー、ホラー映画の愛すべき怪物たち』(ネコ・パブリッシング、2013)


ステファヌ・オードギー 著、池上俊一 監修、遠藤ゆかり 翻訳『モンスターの歴史(「知の再発見」双書)』(2010)


・クリストファー デル著/ 蔵持 不三也 (翻訳)/松平 俊久 (翻訳) 『世界の怪物・魔物文化図鑑』 柊風舎、2010


 古今東西の怪物・魔物の図像を収録。最終章の第10章で、未確認動物について若干触れている。


・蔵持 不三也 (監修)/松平 俊久 (著)『図説 ヨーロッパ怪物文化誌事典』 原書房、2005


 250以上におよぶ豊富なカラー図版。「怪物」の特徴や語源、形態、出自、時代にいたるあらゆる側面を詳細に描き出す「異形の博物誌」


・デイヴィッド・ゴードン・ホワイト著/金利光訳『犬人怪物の神話 西欧、インド、中国文化圏におけるドッグマン伝承』(工作舎、2001)


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・斎藤 君子 (著)/スズキ コージ (画)『ロシアの妖怪たち』大修館書店、1999


 ロシア妖怪話の世界。第一章「森の妖怪レーシー」は、ロシアの森を治めている神話的存在。レーシーをめぐる民話が多数収録されているが、現代の未確認動物・雪男とレーシーとの関係についての考察が興味深い。他の地域の獣人伝説がそうであるように、現代の雪男目撃談の中にも、このレーシーの形象・物語が受け継がれている様を見てとることができる。


・中野美代子『中国の妖怪』 岩波新書、1983


 古代から現代まで、中国の妖怪文化を多角的なアプローチで解き明かす。まさに当時騒動の最中であった中国〈野人〉への考察も収録。現代の神農架〈野人〉の形象と目撃談に『山海経』以来の中国の山の妖怪イメージが継承されていることを、早い段階で看破し、具体的な指摘をおこなっている。